長らく仕事をしていると、引っ越しなどの理由で、気心の知れた患者さんとお別れすることがあります。
会えなくなるのは寂しいけれど、人生に別れは付き物です。
先日、私が何年も担当させて頂いていた患者さんとワンちゃんが、カナダに帰られました。カナダ人です。ふるさとに帰られたわけです。
そのワンちゃんは重度のアトピー性皮膚炎でした。この疾患を患者さんにご説明し、理解を頂き、治療を継続するのは、日本語でも、難しいことです。この方は、日本語が話せませんでした。私の拙い英語で、本当に伝わっているのか?と、いつも不安でした。とても熱心な患者さんで、薬用シャンプーや除去食なども、頑張って下さいました。
ここ数ヶ月、見違えるほど綺麗な皮膚になったそのワンちゃんが帰国することになったとき、患者さんにカナダのご自宅周辺は動物病院はあるのか、と尋ねました。その子には医療ケアが必須だからです。ええ、たくさんあるわ、都市部なの、と答えられました。それは良かった、と答えました。
「But….you are the best vet in the world ,I think.」(でも、、、私が思うに、あなたが世界で一番の獣医だわ。)
私はうっかり泣きそうになりました。私は世界一の獣医ではありません(当たり前だ)。第一、オリンピックじゃあるまいし、獣医に世界1も2もないのです。
私がうれしかったのは、今までちゃんと、インフォームドがとれていて、治療に納得して頂いていたんだという事実です。正直、何年も苦しんだ症例だったけど、すべてうまくいったんだ、という事実です。
あなたの息子たちに。。と、たっくさんのシャボン玉を頂きました。我が家は一生、少なくともシャボン玉には困らないでしょう。
後日、自宅前で息子たちと楽しくシャボン玉をしました。一つのシャボン玉が、隣家の屋根を超えていきました。
「あのシャボン玉、外国までいくんちゃう。」と、ロマンチックな我が息子。
「それは無理やな。」現実的な母。
カナダはあまりにも遠く、シャボン玉が届かないばかりか、私が足を踏み入れることもおそらく一生ないでしょう。それでいいのです。私の挑戦は、中宮東之町で続きます。
写真は頂いたシャボン玉。ごく一部です。