もち動物病院日記

生きてるだけで

昔々、といってもたかだか10年くらい前のことですが、乳腺腫瘍(オッパイの癌)の肺転移で、余命いくばくもないネコちゃんを担当したことがあります。

初診の来院時、すでにレントゲンで肺に転移が認められ、手術が叶わず、内科療法(お薬や点滴)で苦しみを軽減させてあげる治療となりました。

当時のスタッフが一丸となり、緩和ケアはとてもうまくいきました。ひどく苦しむ、ということもなく、約2か月に及ぶ闘病生活の末、彼女は安らかに天国へ旅立ちました。

そのネコちゃんの飼い主さん(若いお兄さん)が、治療中、おっしゃっていたこと。

「こいつは、いいなあ。俺がこんな病気やったら、ああ仕事どうしよう、家族はどうしようって、心も病むもんなあ。ネコはそんなことは考えなくていいから、いいよなあ。」

なるほど、そんな考え方もあるのか、と当時、思いました。そのネコちゃんはそのとき、おししい魚のスープを舐めていました。幸せそうに見えました。

私の座右の銘は、「生きてるだけで丸儲け。」(ええ、パクリです。)

なかなか、そうは思えないようなつらいことも、人生では起こるのでしょう。でも基本、そう思っていたいです。

この写真のヤツは、ホント、生きてるだけで毎日幸せそうです。